こんにちは!
プロスキーヤーの小原健汰です
大学を卒業してレーシングスキーの修行で3年単独海外転戦し
現在はスキーのレッスンで生計を立てています
・スキーのチューンナップが自分で出来る
・チューンナップに必要な道具が分かる
・チューンナップの際の注意点が分かる
それではいってみましょう!
準備する道具
まずはチューンナップの際に準備する道具について説明します
バイス
スキーをチューンナップする際に固定する道具です
横向きにも、縦向きにも固定できます
ファイル(エッジシャープナー)
エッジを研ぐ際に使う道具です
スキーに直接当たり、エッジを削る目的で使用されます
簡単に説明するとヤスリです
ファイルガイド
ファイルを固定し角度をつけるための道具
最初から角度が決まっている物もあれば
角度を調整できる物もあります
クランプ
ファイルとガイドを固定するための道具
挟む形状のものと
ネジで固定するタイプのものがあります
ボーダーカッター
エッジとサイドウォールの間のボーダーを削るための道具
ボーダーはエッジの材質よりも硬いのでこのような道具が必要になります
小さい箒や刷毛(はけ)
削ったエッジのカスを払う為にあったら便利です
ブラシ
チューンナップ専用のブラシ
様々な素材のものがありますが、
ブロンズ(銅)と馬毛で使い分けるのがお勧めです
アイロン
ワックス専用のアイロン
100度以下から180度ほどまで温度調節出来るのが一般的です
ワックス
溶かして滑走面に塗るスキー専用のワックスです
様々な種類があって雪の温度や雪質に合わせて使い分けます
ワクシングシート
アイロンを直接滑走面に当てて熱でスキーを痛めるないようにするための道具です
スクレーパー
塗ったワックスを滑走面から剥がすための道具です
ワックスを剥がす為には
滑走面を傷つけないように樹脂でできている物を使います
ウエス
意外と大事です
基本的には滑走面やアイロンの汚れを取るのに使います
毎回綺麗な布で拭き取る必要があるので使い捨てのウエスがオススメです
チューンナップの前に
チューンナップを始める前にスキーをしっかり乾燥させておきましょう
スキーの温度が冷たすぎるとワックスが浸透しづらくなるので
室温程度に暖めて置くようにしましょう
バイスでスキーを固定する
スキーをチューンナップする際は
バイスという特別な器具でスキーを固定します
スキーを固定する際は横向きと縦向きがあり、
- エッジを研ぐ際は縦向き
- ワックス関係の時は横向き
に固定します
横向きに固定する際は真ん中のバイスの留め具を使い
縦向きに固定する際は前後のバイスの留め具を使います
エッジのチューンナップ
まずはエッジのチューンナップから始めます
この段階でもし滑走面にワックスがついている場合は
綺麗に剥がしておく必要があります
ボーダーを削る
ボーダーがエッジよりも飛び出ている場合は
ファイルがボーダーに当たってしまってエッジが削れませんので
ボーダーをはじめに取っておきます
ボーダーが何かという説明はこちらの記事に書いてありますので
分からない方は見てみてください
まずは滑走面側にボーダーカッターの側面をセットします
エッジと同じ高さに目線を落とし、
ボーダーカッターの刃がボーダーに当たっているか
後ろから見て確認します
後ろから覗き込み、刃が左に行き過ぎると
サイドウォールしか削れなくなってしまします
逆に右に行きすぎてもエッジに当たってしまいます
少し削ってサイドウォールとボーダーが
両方削れるように位置を調整しましょう
新品のボーダーカッターであれば刃がよく切れるので、
力を入れないで少しずつ削ります
あまり力を入れて削ると刃がバウンドして
ナミナミになってしまいます
こうなると直すのは至難の技です
新しい道具も必要になってしまうので気をつけてください
ボーダーを削る際、滑走面とボーダーカッターの間に
削ったカスが入ってしまうと板を大きく傷つける場合があります
ボーダーを取る際に限らず、エッジの手入れの際は
滑走面から道具を離すたびに
刷毛や、布などで滑走面の埃を落とす癖をつけましょう
エッジを削る
ボーダーが正しく取れれば、
エッジを削るためのファイルが正しい角度でエッジに当たるようになります
まずはファイルをガイドにセットします
この時メーカーによっては
滑走面に当たる部分と
ファイルを取り付ける部分が決められているので
向きをしっかり確認してください
ガイドのファイルを取り付ける面にファイルを置きクランプで固定します
少し強めにファイルを煽っても動かないように固定してください
次にガイドの側面を滑走面に当て、
ファイルがエッジに当たるようにセットします
このままエッジの側面に
ファイルがなるべく多く触れている状態を保ちながら
後ろに引いていきます
細いエッジの削りカスが出てきたら成功です
コツはエッジを削る際に
- 腕だけで引こうとしないこと
- スキーの滑走面側の斜め45度から
- エッジの角の方向に優しく押し付けること
体全体を移動するように削り一度スキーから離します
少し後ろに歩いてから
前に削った範囲と少し被るように再びガイドをセットし
またエッジを削ります
エッジに対して横方向にファイルが脱線すると
大きくエッジを傷つけてしまい
初心者では直せなくなってしまいますので
とにかく優しく、少しずつ、丁寧に
を意識して挑戦してみてください
ワックスをかける
エッジを研いだら次はワックスをかけます
エッジよりはグンと難易度が下がりますので
エッジを自分で研ぐのが不安な人は
ワックスだけでもスキーの手入れとして
挑戦してみてください
ブラシをかける
まずは滑走面にブラシをかけていきます
ワックスをかける前のブラッシングは
汚れを取り除くことが目的ですので
ブロンズ(銅)の素材のブラシを使用するのがおすすめです
滑走面からブラシがなるべくはみ出ないように
ブラシが滑走面からあまりはみ出ていない
ブラシが横向きで滑走面からはみ出てしまっている
トップからテールの方向に繰り返しブラシをかけていきます
前にブラシをかけた範囲と少し被せながら
少しずつ進んでいき
2回ほどトップからテールまでを丁寧にブラッシングしましょう
ブラシをかけ終わったら滑走面の汚れをウエスで拭き取ります
ワックスを垂らす
いよいよ滑走面にワックスを乗せていきます
作業の前にアイロンの表面をウエスで綺麗に拭いておきましょう
- 左手にアイロン
- 右手にワックス
を持ち
アイロンにワックスを押し付けながら
アイロンの角からワックスを垂らしていきます
滑走面からワックスがはみ出ないように垂らします
この時
- ワックスをたくさん使いすぎると勿体無い
- ワックスが少なすぎるとスキーを痛める
ので写真を参考に量を調整してみてください
溶けたワックスが足や手に付くと熱いので注意です!
ワックスを伸ばす
ワックスを垂らしたら
そのワックスを滑走面全体に伸ばしていきます
この過程でワックスが滑走面に浸透していきます
先ほども書きましたが、
作業している部屋が寒すぎると
滑走面にワックスが浸透しづらいので注意してください
今回は
- 左手にワクシングシート
- 右手にアイロン
を持って作業します
先ほどワックスを垂らしたことで
アイロンがワックスで湿っていると思いますので
そこにワクシングシートを貼り付けます
1回のワクシングでシートの半分しか使わないので
もう半分の余ったところを左手で持っておきます
その状態で、上から
アイロン
ワクシングシート
滑走面
となるようにスキーにアイロンをあて、
トップからテール方向に滑らせていきます
この時
垂らしたワックスの凸凹や
ワックスが溶けていることでの抵抗で
アイロンが進みにくくなりますが
絶対に同じ場所でアイロンを止めないようにしてください
滑走面に熱が入りすぎて焼いてしまい
スキーを壊してしまう原因になります
最初は少しおっかなびっくりで
抵抗を感じたらすぐスキーからアイロンを離すくらいがいいと思います
アイロンをかける際はトップからテールまでの一歩通行が原則です
往復しないように注意しましょう
また、一度トップからテールまで熱を入れただけでは
ワックスは溶けきりません
最低でも3回ほど
ワックスの硬さによっては5回ほどアイロンがけします
垂らしたワックスが完全に溶けきって、
溶けたワックスで滑走面がツヤツヤになったぐらいが目安です
ワックスを滑走面全体に伸ばしたら、
最低でも30分ほど暖かい部屋で放置しましょう
その間にしっかりとワックスが滑走面に浸透します
ワックスを剥がす
ワックスが乾いたら最後にワックスを剥がします
使用する道具は、
- スクレーパー
- 馬毛ブラシ
になります
スクレーピング
滑走面が上を向くようにバイスに固定し、
スクレーパーが横向きになるように滑走面に当てます
スクレーパーの角でワックスを削るようにして
トップからテール方向に少しずつ削りながらスライドしていきます
この時力が弱すぎてもワックスが削れません
何度かかけていけば次第に慣れてくると思います
ブラッシング
ワックスの削りカスが出なくなってきたらブラッシングに入ります
ブラッシングは馬毛のブラシを使用します
トップからテールに向かって、
30センチほどの間隔で一回かけたら、
滑走面からブラシを離して再度かけていきます
少しずつ進みながら滑走面を磨くイメージです
滑走面全体がツヤツヤしてきたら終了です
板のまとめ方
以上がチューンナップの工程になります。
チューンナップが終了した板はそのままにしておかず、
1組にまとめてベルトで閉じておきます
最低でも
- トップに1つ
- テールに1つ
使用して板を固定します
こうすることで板が横にずれて滑走面が傷つくのを防ぐ事ができます
ベルトを1つしか使用しないと、
そのベルトを支点に板がずれてしまいますので注意してください
- スキーを乾燥させるときは板を開いて保管する
- チューンナップが終わったら板は閉じて保管する
これを習慣付けておくようにしましょう
まとめ
正直に言うと、
初心者の方がチューンナップを自分で行うのは
なかなかハードルが高いです
しかしスキーに行く頻度が上がっていくと
年に一回のチューンナップでは追いつかなくなってきます
- エッジが丸くなったり
- ワックスが抜けて滑走性が下がったり
するとスキーの難易度が上がってしまいますし、
何より滑っていて楽しく無くなってきてしまいます
最初に道具を揃えるのは
なかなか手間とコストがかかってしまいますが
一度揃えてしまえばほとんどの道具が一生物ですので
必要な頻度を考えれば毎回チューンナップショップに持っていくより
結果的に安くなると思います
スキーも圧倒的にいいコンディションで長持ちしますので
ぜひチューンナップを習得してみてください
それではみなさま最高のスキーライフを!
またね!